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25 . November
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12 . September
中間テストが終わったころ、季節は春から夏に変わった。



>side 富松作兵衛

世の中学三年生は受験真っ只中だろうが、この学園は中高一貫だ。定期テストでよほどの成績をとらなければ高校への進学は危ぶまれないだろう。期末までのささやかな自由の身に俺の心は浮き立った。
部活も、そして委員会もテスト休みが明ける。彼の人を思って顔がにやけた。食満先輩とも会えるのだ。
テストで忙しかったせいか、あの変な夢も見ていない。変な夢ではあったものの、悪夢ではなかったので実を言うと少しだけ寂しかったりもした。
あれだけ共通した設定の夢を何度も見るなんてそうそうあることじゃない。きっとまた見ることもあるだろう。


それを見つけたのは、部活のランニングの最中だった。果てしなく広い学園を走って回っている最中、突然の突風。
砂が目に入って、集団から離脱した。
「向こうに綺麗な小川があるから、そこで流してくるといい。後から追いかけておいで。」
顧問に言われて、片目でよろよろと草むらを進む。山に囲まれた学園の端のほうなんて森みたいなもんだ。ほどなくして水音が聞こえて、小川にたどり着いた。涌き水みたいに綺麗な小川。
目を洗ってから、手ですくって飲んでみる。美味しい。
これはいい場所を見つけたかもしれない。
秘密基地を見つけた気がして、得意な気分になった。鳥の声だけが聞こえる静かな場所。こんど遊びに来よう、そう決めて、足を踏み出す。
ふと、何かに引かれた気がした。振り向くと、木々の間に朽ちた小屋が見えた。殆ど森と同化したような古い苔と蔦に塗れた小屋。
少し迷ってから、ちょっとだけと決めて小屋へ歩きだす。一歩進んだ所でなぜかあの夢のことを思い出した。
二歩、三歩進むごとに体の中から芽吹くように夢の光景が蘇る。
次々と脳裏に浮かぶその光景は様々で、自分が着ている忍者装束の色も次々と変わっていった。井桁柄から青へ、そして若草色。巡る景色に時折瞬間的に入る、黒装束。今まで見た夢の数々。
今までに見た夢?違う。黒い装束なんて夢で一度も見たことない。俺の見たことのない、夢の中の風景だ。
ぞくり。寒気がして、肌が粟立った。
行きたくない。この先には行きたくない。なのになんでだろう。足の歩みは止まらず、戸口に辿り着いた。床は既に朽ち果て、小屋の面影はもう壁と、屋根だけだった。中になにもないことに安心して、ほっと壁に手をつく。湿った肌触り。壁も崩れ、小屋自体が土へ帰るのも時間の問題かもしれない。苔だらけの壁を撫でる。その壁に、小さな古い窪みがあった。何で出来たとももう既に解らない、朽ちた小さな窪み。


見覚えがあった。


耳鳴りがする。鋭いその音に紛れて、声が聞こえる。
 「っっお前ら!!そっちじゃねえって言ってんだろ!!」
 「おおっっ!人の進路に手裏剣とは危ないじゃないか作兵衛!」
 「てか、この倉庫用具委員会管理じゃねえの?いいの?傷つけちゃって。」

「……ッ!」
これは俺がつけた傷だ!!!

背中を走る寒気に続いて、沸き上がる何か。
フィルムの早送りを見ているように頭の中を渦巻く何かに混乱する。
なんだこれ!なんだこれ!!酷い頭痛。涙が溢れ出した。
わけもわからず叫ぶ中、頭の中のもう一人の自分が冷静に告げた。

「何を言ってるんだ。この記憶はお前のものだろ?忘れたとは言わせねえよ、富松作兵衛!」

「ああああっ!!」
声から逃れるように手を振り回した。
その手に当たる、柔らかい感触に驚いて目を見開く。自分の結った長い髪の毛が目の前をよぎった。まさかと思う。自分はごく標準的な中学生の髪型をしているのだ。この髪が自分のものだなんてありえない。高く結いあげられた髷と背中へ足れる髪の束の感触に愕然とする。
気付けば辺りは夕闇。後退ろうとして、自分の恰好が先程まで着ていた体操服ではなく、時代劇のような着物であることに気付いた。それから漂う生臭い匂い。鼻を塞ごうとしてその手に刃物を握っている事にまた驚く。ソレから滴る赤黒い、どろりとした何か。
「なんだよ、なんなんだよ、これ…」
辺りを見渡して、自分の真後ろに転がる何かを見つけた。
首が千切れかけた人間の死体だった。
恨めしげに自分を見る、濁った目。
見覚えのある顔だ。
そうだ、一瞬前まで手を合わせていた敵方の忍者だ。
密書を届ける道中、付けられていると感じた。
面倒だけど片付けるしかないかな。そう思ったから夕闇に紛れて人気のない道に入り、わざと誘い出して応戦した。簡単な相手だったのだ。攻撃を避けられてよろめいた相手の刀を腕当てで流して、懐に入れた苦内で一突き。捻る。
ただそれだけ。
そう、見覚えがあるはずだ。
こいつは俺が殺したんだから。

ぐらりと目眩がした。立っていられなくて、その場に膝をつく。
思い出した。
そうか、夢だなんて思ってたものはすべて過去の記憶だったんだ。
忍び装束を着て学んだ忍術学園のことも、黒装束を着て城に忠誠を誓ったことも。

すべて自分の記憶だったんだ。

そう自覚したと同時、ふうっと景色が遠くなった。
墨で掻き消されたような意識の中、遠くで小さく声が聞こえる。

「さくべえ、ごめんな」

聞き覚えのある、あの声。なんで忘れたりしたんだろう。絶対覚えてなきゃいけないことだったのに。



そして、ぶつっと音がするように意識が途切れた


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