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07 . October
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04 . December
静かに、ドアが閉まる。


>side 富松作兵衛


「馬鹿かお前は。」
左門が馬乗りになった三之助の頭をパシンと叩く。
「大会もうすぐだろう?先輩殴って出場停止にでもなるつもりか。ばかもん。」
ハッとした。俺も、三之助も。そうだ。もうすぐ三之助は大会だったのだ。先輩を殴ったりしたことが解れば、出場停止所じゃすまなかったろう。
三之助もその事に気付いたようだった。三之助ひとりではなく部全体のこととして、左門は止めたのだ。
「…すまん。……、ありがと。」
その言葉でようやく左門は三之助の上から降りた。
「大体何なんだ!作兵衛、三之助!私はさっぱり話が解らない!」
きぱりと言う左門に返す言葉がない。
しばらく、しんとした沈黙が続いた。やがて三之助がぽつりと口を開く。
「食満、先輩の、言ってたことは本当なのか?」
「違う。結果的にそうだったとしとも…」
だすんっ!音がした。三之助が壁を殴り付けた音だ。
「結果がそうなら結論もそうだろ!!!」
「違うっ!!!」
大声に大声で返す。
過去を思い出した今、三之助の言いたいことも解る。三之助は大切な人をああやって亡くしたのだ。
俺らのことなんて理解出来ないだろう。だけど。だけど!
「それで、生きていけたんだ、先輩も、城も。そうやって生きてたろ、俺達は!!次が俺の番だっただけだ!それの何が悪い!!先輩が悪いのか!!??」
生きたかった。先輩と二人で生きたかった。
でも、だって、許されなかったんだ。しょうがないじゃないか。
目頭が熱くなった。涙が零れる。
忠義もなく先行きの憂いもなく、綺麗な別れを告げることが出来たお前らとは違う。
口には出せない本心。口に出しちゃいけないと思った。嗚咽が溢れる。
「何も知らないくせに口出しすんじゃねえ!」
「…!」
「作兵衛。」
三之助が息を飲んだのがわかった。続いて左門の諌めるような声。
涙が溢れて止まらない。
何で思い出したんだろう。あの夢を見て、目が覚めて先輩がいた時。ああ先輩に本心を伝えなきゃって、だから俺は思い出したんだって思った。
だけど先輩は信じてくれない。三之助もだ。
これじゃあ俺はいったい何のために思い出したんだろう。こんなんじゃ思い出さないほうがよかった。
悲しくて、悔しくて俺は大声で泣いた。
途中、三之助が部屋を出たことも気付かなかった。左門は傍でずっと背中を摩ってくれていた。
落ち着くまでどれくらい時間がかかったんだろう。
再びベッドに横になった俺に左門が言った。
「昼休みの間に作兵衛の様子を見に行こうということになったんだ。」
昼休み。そうか、だから食満先輩も来てくれてたんだ。でも、ってことはもう午後の授業始まってないか?お前。そう問うと、「それどころじゃないだろ」と一蹴された。
「お前と三之助、私に何を隠してんだ?」
ぎくりとする。
話して、伝わることだろうか。
何故過去を持った人が公言しないのか解る気がした。到底常識で語れることではないのだ、これは。話して、左門はどう思うだろうか。
「言いにくいことか?」
「……」
俺の迷いが通じたらしい。左門が頭を掻いて言った。
頷く。これ以上、人が去っていくのは堪えられそうになかった。
「ふむ。じゃあとりあえず私は何も聞かんでおこう。」
「…いいのか?」
「だって言いたくないんだろう?なら聞かん。」
こういう時、左門はすごく大人だ。
ありがとう、呟くと、いいから早く三之助と仲直りしろと笑われた。

本当に、過去を思い出してない左門はこんなに大人なのに、なんで思い出した俺達は大人になれないんだろう。



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