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07 . October
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01 . February
俺の話はこれで終わり。





長い、長い話だったろ?聞いてくれてありがとう。
ホント言うと、この話は誰にもしたことなかったんだ。
滝夜叉丸にだってここまで詳しくは話してない。…ちょっとかっこ悪いとこもあるしさ。
それでも、どうしても聞いてもらいたかったんだ、今。
なんでかって?


……、
少しだけ、今の話をするよ。


俺は19歳になった。大学に通ってる。
滝夜叉丸とは色々喧嘩もするけどうまくいってる。就職をしたら一緒に暮らすつもり。ずっと前に交わした約束、あれがようやく果たせるんだ。
俺は大学入ってすぐでもよかったんだけど…まああの人お坊ちゃんだしね。
ま、たかだか4年ぐらい我慢するさ。
数百年離れてたわけだし、今更4年なんて大した時間じゃないっしょ。

って、こんな風にあの頃のことを笑ってネタに出来るようになったのは、滝夜叉丸が16歳の誕生日を迎えてからだったんだ。
再会したって言ったって、やっぱり前の記憶があるもんだから、俺は滝夜叉丸が15の年、かなり荒れた。少しおかしくなっちゃうくらいに不安定だった。常に彼が視界に入っていないと不安で堪らなかった。特にあの頃の滝夜叉丸が死んだ、秋の頃は。
自分でも異常だと解ってたんだけど不安は尽きなくて、周りには随分と迷惑をかけたと思う。作兵衛が泣くのも久々に見た。
七松先輩が殴り倒してでも止めてくれなかったら、どうなってたのいたのか、今考えるとちょっと怖い。
それでも、それほどまでも、俺は彼を失うことが怖かったんだ。目の前で逝かれた記憶と、喪失感が俺を震え上がらせた。彼をもう一度失うなんて耐えられない。
けど、滝夜叉丸は死ななかった。
16歳の誕生日、俺の前に立った滝夜叉丸は言った。
「今日から晴れて16歳だ。ざまあみろ、お前の考え通りにはならなかったろう」
そう差し出された手は、記憶にある傷痕だらけの手の平ではない、綺麗な肌をしていた。思わず伸ばした俺の手も、あの頃しょっちゅう作っていた刀傷や火傷はない。
当たり前だ、歩んだ道が違う。人生が違う。別人の手だ。でも、
「もう記憶に捕われるな、三之助」
俺の大好きな人の、大好きな手だ。
肩を抱かれ、彼の胸の中で俺は泣いた。声を上げて泣いたのは久しぶりのことだった。
泣きじゃくる俺を、滝夜叉丸は優しく撫でた。
「私は今を生きているし、これからも生きる。お前と一緒に。そう約束したろう?」
過去は過去で、今ではない。自分が過去に縛られ続けていたと、俺はその時ようやくわかったんだ。

そう、そんで、俺は今19歳。記憶の中の「俺」が死んだのは20歳の時だった。
だからと言って俺は来年死ぬわけじゃない。もし死んでもあの頃とは無関係だって解ってる。
いくら記憶があっても、あの頃と今の俺は別人だ。20歳になったからって何かが変わるわけでもないって、うん、思ってたんだけど…
最近、気付いた。
少しずつ、ほんの少しずつだけど、室町の頃の記憶が薄れていってるんだ。霧が深くなっていく様に。
記憶が戻ってからずっと、何をしていても頭の片隅から離れなかったあの頃の思い出が、少しずつ薄れていってるんだ。19になってから。

俺ね、滝夜叉丸と再会してから解ったことがある。
左門や作兵衛に記憶がなくて俺にはあったという、その意味。
俺はこの記憶を過去の業だと思ってる、罪だと。そんで、この記憶は今世の俺が滝夜叉丸に会うために必要なものだと思ってる。
あれだけ過去に人を殺した俺が、ただ何も罪を負わずに彼とまた出逢うっていうのは、少し虫の良すぎる話だと思わない?俺だって散々泣いたし苦しんだけど……俺が殺した人の分だけ、同じ様にその人を思って泣いた人がいる。それを忘れんなってことだったんだと思う。
悪い事をしたら罰を受けるってのは、今も変わんないだろ?神とか仏とか、俺はいるともいないともよくわかんないけど、そういう天の采配だったんじゃないかなって思う様になったんだ。
それで、今、その記憶が薄れようとしてるってことは、ちょっとずつ、俺は赦されてきてんのかもしんない。もう「俺」として生きろって、言われてるのかもって思ってきて……っつうか、言われてる気が、して。
そりゃ思い出したくないことだって沢山あった、悩んだし、辛かった。でも、俺にとってはやっぱり大事な記憶なんだ。
全部をすっかり忘れることはないと思うけど、薄れていくのだって、寂しいと思うよ。
あの頃、長い歴史の中で記録にも残らないような一瞬に、俺が、俺らが一生懸命に生きて、恋をした物語だから。
だから、少しでも多く思い出せる間に聞いてほしかったんだ。
室町時代に、忍者として生きた「次屋三之助」と「平滝夜叉丸」が居たということを。
「彼」の物語はこれで終わるけど、「俺」の物語は、まだこれからも続いてく。この時代を生きる滝夜叉丸と一緒に。

うん、
一生一緒にいたいから。
俺が死ぬ、その時まで。

幸せになるよ。



Cuz I wanna be with you.
Until I die.
and,
the story continues...




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