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07 . October
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21 . April
濃紺の制服で過ごした日々はとても充実していた。


覚悟が出来たことで、自分を冷静に見直すことが出来たということもあるだろう。
得意な部分は更に磨き、足りない部分は自主練で補い。
滝夜叉丸ともよく組み手を組んだ。彼の得意とする戦輪は近、中距離戦向きで、中距離が苦手ですぐに接近戦に持ち込む俺にとってはいい相手だった。
一度も勝てたことはないけど。

大体の苦手は克服したけど、一つだけずっと治らなかったものがあった。
方向音痴だ。そりゃ自覚がなかったんだから治りようがあるはずがない。
改善されたただ一つと言えば、時間をかけさえすれば学園には戻って来れるようになったことだ。好転した、というかなんというか。
当時の作兵衛に言わせれば「体育委員会で走り回ってるうちに野生化して帰巣本能が身に付いたんだろ」で、滝夜叉丸に言わせれば「獣は自分の縄張りでは迷わないものだからな」ということらしい。どちらも俺を獣扱いしている。酷い。
でも結局これは復路にしか適用されず、往路は結局ダメだったのだからどうしようもない。(課題のときは途中まで監視役の土井先生と一緒だったのだ)

本当にどうしようもない。
だってあの時まで俺は、

……、
「将来を共に」、この約束は俺の進級試験によってより現実めいてくる。
この時既に滝夜叉丸も俺も城勤めの戦忍の希望を出していた。示し合わせた訳ではないが、諜報に回るには俺らは性格がちょっとばかし不向きで、フリーになるには弱すぎた。人を殺すのに忠義という理由の一つでも足したかったのだ。
互いに、いつ死に到るかわからない未来を選んだことを確認した俺らは、もう一つ約束を重ねる。
一緒に暮らそうと。
いつ帰れるかわからないし、互いに過ごせる時は少ないかもしれないけど、零ではない。
一緒に住もう。一時でも。共に。

死が、二人を分かつまで。

契約とも言える誓い。
静かに口を合わせて二人で抱き合った。
「私より先に逝ったら許さんぞ」
目を真っ赤にして滝夜叉丸が言った。俺も泣いた。
「あんたを一人にはしない」
必ず、とは言えないが、本心からの言葉だった。
開け放した障子から鈴虫の音。秋が訪れようとしていた晩、俺らは誓い合った。


死ぬまで共に。
儚い想いだと思う?そんなマイナスな感情で誓い合った訳じゃないんだ。
平成の世でだって、恋人同士の願いは変わらないだろ?
あの時は今よりも少しだけ世の中が物騒で、そんで俺らは少しだけ、死に近い場所に踏み込もうとしていた、それだけ。
誓いを交わした俺らは何より幸せに愛し合っていた。



忍術学園の卒業試験は秋から冬にかけて行われる。就職活動はその結果を引っさげて、なので年明けからだ。なによりも実戦経験を求められるので、まあこういう順序になるわけだ。

滝夜叉丸の卒業試験は十月にはいって間もなくのことだった。
任務書を持っていつもの得意げな顔で彼は、俺を呼び止めた。忍たま長屋の廊下でのことだった。
「三之助、悪いがしばらくの間委員会を頼む」
手に持った封書には、卒業試験、の文字。ああ、と俺は思った。実戦課題というのは五年になってから爆発的に回数が増えるので、今更大した感慨もない。この時もまたかと思っただけだった。
「卒業試験っすか。順番くるの意外に早かったですね」
「まあ、大方私が欲しい城のスカウト達が早くしろと学園に抗議したのだろう。しょうがない、溢れる才能は隠そうとしても隠しきれるものではないからな…それに…」
「はいはい。目立つのは忍者として致命的っすよ」
さすがに付き合って二年も経てば軽くあしらうのだって上手くなるし、あしらわれるのも慣れてくる。
「まあ、というわけだからしばらくの間お前が委員長代理となってうまくやってくれ。」
「はい了解。…しばらくってどれくらいですか?」
「まだ詳しくはわからんのだ。なんだ寂しいのか?」
にやりと滝夜叉丸が笑う。俺はしれっと答えた。
「独り寝は寂しいんで、出来れば早く帰って来てもらいたいですけどね」
「………あほ」
言いながら、ほんのりと紅く染まった頬が可愛かった。
「ま、お気をつけて」
「誰に言ってるんだ」
「はいはい」
「「はい」は一回!」
「へーい」
「三之助!」

こんな風になんの予感も、虫の知らせもなく。
数日後出立をする滝夜叉丸を笑顔で見送った。
こっそりと隠れてした見送りのキスは軽く、甘く、笑顔で。
「いってらっしゃい」
「ああ、行ってくる」


そしてあの日がやってくる。

あの日、俺はいつもの様に迷っていた。長屋に戻ろうとしていたはずが、どう迷ったのか別棟の薬学の教室の方までひょいひょいと渡り歩き、頓珍漢にも「ったく作兵衛達どこいったんだ」なんて思っていて、
そして、

「三之助!バカ、どこいってたんだこんな時まで!」
大声に驚いて振り向くと作兵衛だった。
「お前、大変なんだぞ!滝夜叉丸先輩が!!!」
続く言葉に、目を見開く。心臓がぐうっと押し込まれた気がした。息が止まる。
「今、医務室で…でも……!だからはやく…!」
言葉途中で俺は医務室へと駆け出した。後ろで作兵衛の声がした。
「バカ、お前一人じゃ行けるはずない…!」
だからなんだ。それで止まれるはずもない。
嘘だ、馬鹿な、信じない、信じたくない、なぜ、なぜ、なぜ!なぜ彼が!疑問ばかりが頭に浮かぶ。
初めて迷わずに一人で来た医務室の襖を、俺は勢いよく開けた。


「滝夜叉丸!!」
「……ああ、さんのすけ」

布団に寝ている滝夜叉丸がこちらを向く。
ひゅうひゅうと空気が漏れる嫌な音。
紅く染まる包帯。一つじゃない、頭に、右目に、首に腕に腹に。掛布で見えないが、おそらくその下にも。そしてそのすべてが紅く染まっている。
「…ちょっと、しくじった」
そう笑う、彼の肌は土気色で、いつも気にかけていた髪は土に汚れ艶をなくし、まるで、まるで死んでしまいそうで………いや、
「……っ!」
ぼろりと涙が溢れた。鼻の奥が熱い。

唐突に理解したのだ。

——この人はもう死を迎えようとしている。


死が二人を分かつまで。
いつの間にか、滝夜叉丸の「死」はすぐ側まで来ていた。
俺らの別れは突然だった。

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