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07 . October
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25 . August
「俺ちょっと今日抜ける。」
「お!平先輩と深夜デートか!相変わらずラブラブなんだな!」
「おま…三之助…本当にいい加減バレるぞ…ほとんど毎日じゃないか。」



 >side 次屋三之助


夜、俺は滝夜叉丸といた。
場所は寮の屋上へ続く、階段の踊り場。寮で就寝の点呼が終わった後、俺らはたまに部屋を抜け出してここで話をする。
委員会や部活で意外と忙しい学生生活は恋人同士の逢瀬の時間を奪うのだ。これくらいの規律違反は許してほしい。それに話をするだけなんだから。…本当だってば。まあ、ちゅーぐらいはするけど。
それに、今日は世間話とは他に、別で話しておきたいことがあったのだ。
「作兵衛が思い出しかけてる。」
「富松が?」
二人だけの逢瀬もつかの間。口を開いた俺に、隣に座った滝夜叉丸の眉が顰められた。
「夢を見るって。しかもここの所、ずっと。」
夢の中身は、忍術学園のことらしい。それはつまり作兵衛が「あの時代」を思い出しかけているという事だ。
記憶があるってのは、あまり良いことではないと俺は思ってる。俺らは忍びとして生きてきたから、その分人も殺してる。
平成の世で、そのことを思い出す辛さと罪悪感。胸糞悪くなるほどの自己嫌悪。
この世に産まれて10年で俺はそれを思い出した。たった10歳で思い出した、人を殺した一生。気が狂いそうな中、それでも俺が生きていけたのは今世でも再び親友になれた左門と作兵衛がいたからだ。
その作兵衛がまた、思い出そうとしている。俺としては、あんな苦しい想いは奴らにして欲しくない。
「だが、記憶にむらはあるものだろう?立花先輩も仰っていたではないか。むしろ我々の様に全てを記憶している者の方が珍しいと。斉藤さんは学園内の頃の記憶しか持っていないそうだ。そういう例もある。富松が思い出したとして、お前が懸念するような記憶が蘇るとは限らない。」
「まあ、それはそうなんだけど…」
むらがある、それは重々承知しているのだ。俺らの学年の中でも、自分が死ぬまでの一生を覚えているのは俺を除いても一人しかいない。
「でも、それでも、」
「思い出していいことばかりじゃない、か…」
過去に俺が言った言葉を、滝夜叉丸が繰り返し、俺は頷いた。
思い出して、あの頃の記憶を共有出来たら。そういう思いは俺にだってある。実を言うと、記憶が蘇ったばかりの苦しかった頃、なぜお前らは持っていないのかと恨めしく思った事だってある。
でも、やっぱりあいつらは俺の友達だから。あんな思いはして欲しくないから。
俯く俺の肩に、滝夜叉丸の手がかかった。肩を寄せる様に抱き寄せられて、俺は少し泣きそうになった。
滝夜叉丸の体温がひどく温かく感じる。
「お前は本当に友人を大事にしているな。そういう想いはもう少し顔に出すといいぞ。」
「……ほっとけ。」
無表情は産まれた、いや産まれる前からだ、このやろう。
「しかしここで私たちが気に病んでいてもしかたあるまい。思い出す事は止められやしないのだから。」
だからその時に、滝夜叉丸が続ける。
「その時に、お前がどう富松を支えてやれるかだろう。私の事をお前が支えてくれたように。」
彼の肩に寄せた頭を撫でられる。優しい手のひらの感触。…その通りだ。思い出しかけている事はきっと止められない事なんだろう。俺がどんなに嫌だと思ったとしても。
作兵衛の顔を思った。笑顔や、怒った顔。やっぱり苦しむ顔は見たくないなって、思った。
俺を撫でてくれる温かい手のひらが、俺の悲しみを癒してくれる様に、作兵衛の記憶も消してくれればいいのに。

しばらく、そうして黙っていて、それからぽつりと滝夜叉丸が言った。
「お前、この間話していたことを覚えているか?」
「……ん?」
「私とお前がこの世で、もう一度こうして出会うにあたって、お前の記憶がある事は必要だったんじゃないかと。」
「あ…」
左門や作兵衛に記憶がなく、なぜ俺だけに記憶があるのか。それを考えて、行き着いた一つの仮説だった。
たぶん、俺は滝夜叉丸とこうしてただ好き合うだけには過去の罪が、業が重過ぎたのだ。
個人の意思ではどうしようもないあの頃だとしても、俺が殺したのは産まれてからその時まで確かに個として生きていた人間達で。その人達を忘れて、ただ幸せだった滝夜叉丸との思い出だけを持って、この世で滝夜叉丸と結ばれると言うのは随分虫のいい話だと思う。
苦しんだら苦しんだ分だけ、俺は唯一無二の存在をこの世で手に入れる事が出来たんじゃないかと。
そんなことを考えた。滝夜叉丸が俺より記憶が戻るのが後なのは、それは単に彼より俺の方が人を殺した数が多かっただけ。
これは完全に俺の仮説であって、誰に示されたわけでもないただの妄想。だから滝夜叉丸にしか話していない事なんだけれど、なんとなく、俺も彼もこれは真実なんじゃないかって思ってる。
少なくとも、記憶を持っているという事に、それにむらがあるという事に意味はあると。
預けていた頭を起こして、滝夜叉丸の顔を見る。暗闇の中、彼の大きな目が俺を捉えた。
「思い出す事に理由があるとするのならば、今、富松は何故思い出しかけている?」
そうだ、理由。なぜそれを思い当たらなかったのか。
「心当たりはあるのか?」
心当たり?そんなの一つだけ。
ちくしょう、すっかり忘れていた。よくあいつの親友なんて言ってられるな、俺。

あいつ解りやすいんだ、本当に。
今も昔も。








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